唐突ですが、もし、あなたに「今の職場に満足していますか?」と聞かれたらどう答えられるでしょうか。
社会人であれば様々な答えが返ってくると思います。
- 上司との相性が合わない
- やりがいを感じられない
- 転職したら給料が下がるかも
などと悩んだり、不安が先に立って行動できない方が殆どだと思います。
今回の記事では、会社を辞めたい、転職したいという意志があっても一歩を踏み出せない方のために『自分のマーケットバリューを高める』という話題についてお届けしたいと思います。
自身のマーケットバリュー(市場価値)を高める
このブログを訪問されたということは、今の職場のことや、何か将来のことについて考える機会があったからだと思います。
「自身のマーケットバリュー(市場価値)を高める」ってどういうこと?
と思われたかもしれません。
解りやすく表現すると「自分らしいキャリアを実現するための転職術」を身に着けるということであり、ただ業界内で横にスライドする転職だったり、言い方は良くないかもしれませんが、会社のランクや規模を下げて自分を安売りするのはやめよう。ということでもあります。
何よりも、転職そのものが目的になっている人が多い中、「長期的に自分はどうなりたいのか」を明確にすることが長い人生の中では必要不可欠であり、人生設計を立てることを前提に逆算して「そのために今自分に必要なものや仕事は何か」を考え、それが実現できる環境へ転職するべきだということです。
では、順を追ってみていきたいと思います。
転職2.0の時代の転職は自分の市場価値を高める手段として捉える
現代の転職市場は「転職2.0」の時代に突入していると言われます。
これは、キャリア形成や転職市場に関する知見が豊富な専門家である村上臣(むらかみ おさむ)氏が2021年に出版されたご自身の著書『転職2.0 日本人のキャリアの新ルール』の中で提唱されているものです
大まかに説明すると、今までの時代<転職1.0の時代>は一度の人生で転職をするのは多くても1回という時代であり、ヘッドハンティングに代表されるように、それ自体が成功の証であり、勝ち組みたいな時代は終焉したとのこと。
しかし、人生100年とも言われるように会社の寿命よりも個人の労働寿命のほうが長くなり、社会人として何度も転職するのが一般的になりつつあります。
これからの<転職2.0の時代>では転職の目的はあくまでも「自分の市場価値を最大化するための手段」であるとのこと。
つまり、働く場所を変えるだけでなく、自分自身の市場価値を最大化するためのキャリア設計を重視するものでなければ成功しないということです。
続いて、<転職1.0>から<転職2.0>に思考を切り替えるためのポイントについてみていきたいと思いますが、まずは下記の図表を元に説明を進めていきます。
出典:『転職2.0 日本人のキャリアの新ルール』著者:村上臣(むらかみ おさむ)氏より作成
ポイント①目的<転職は目的ではなく手段>
目的については先にも述べていますが、「終身雇用」や「年功序列」というシステムや概念が終焉し、これからの時代の転職はそれ自体が「目的」ではなく、「手段」とすることであるということです。
さっさと思考回路を切り替えて「自分の商品価値を高めること」に徹することにつきます。
ポイント②行動<タグ付けと発信>
村上氏は2番目のポイントとして<タグ付けと発信>を上げていらっしゃいます。
何のことやら、という感じですが、タグとはスーパーで売っている商品についている「値札」や「ブランド・産地」を示すラベルでも良いでしょうし、「X(エックス)やインスタグラム」などSNSの“ハッシュタグ”をイメージすれば良いかと思います。
もっと平たく言えば自身を表現するキーワードということです。
つまり、人を商品に例えて言えば「スキル」、「経験」、「コンピテンシー(適性や行動力・職務遂行能力など)」という分類があるということであり、その複数のタグの組み合わせで市場価値が決まるだけでなく、そのタグを強化することこそが市場価値の向上につながるということです。
介護の業界で例えると、転職するためにはどんな資格を取れば有利か、などと考えていればよかったのですが、長い目で見た場合にはそれだけでは市場価値としては弱いと言えます。
介護福祉士やケアマネジャー、認知症ケア専門士などの資格を取るだけではなく、そのスキルを使いこなす技を磨くとともに、経験値やリーダーシップ、マネジメント力などの合わせ技が必要だということです。
また、あなたがSNSのハッシュタグをいくつか持っているとイメージすれば良いかと思いますが、“あなたは〇〇の人”というブランドのタグが市場に認識されることで、□□事業所には△△という優秀な人材がいると自ら発信したり他者から紹介されれば、ヘッドハンティングならずも、噂が広がって新規の事業所やプロジェクトを立ち上げるときには「ぜひ、当社へ」とオファーが舞い込むかもしれません。
自身のタグの見つけ方については、記事の後半でも紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
ポイント③考え方<スキルではなくポジション選び>
村上氏が上げているポイントに「業界選び=ポジション選び」という考え方が重要だと説いています。
これに対し、転職が主たる目的となっており、資格やスキルを得てから転職したり、または転職した先で資格やスキルを身に着けようという考え方があります。
ポジション選びという発想になれば、介護だけではなく異業種への転職の道も射程に入ってき来るわけです。
介護は狭い業界ですが、同じタグを必要とする業種・職種は数に限りが無く、選択肢もそれだけ増えるということです。
要は、業界を固定するのか、ポジションを上げて固定していくのか。という2択になります。
介護業界から異業種へ転身するという例はあまり耳にしませんが、資格を取ってからスキルた経験を積むために同じ業界に転職するという例は数多く耳にする話です。
もし、同じ介護業界内でポジションをとるための転職を選ぶのであれば、将来を見据えて規模の大きな新規事業の立ち上げにかかわったり、立上げ当初の施設長や管理者、役員を狙うのもありかと思います。
住んでいる地域だけでは大型の新規出店は少ないかと思いますが、このような場合であれば介護現場から総務やマネジメント系の職種に転換するチャンスもあるかと思います。
常にアンテナは張っておくべきです。
ポイント④価値基準<シナジーで仕事を選ぶ>
4つ目のポイントは、「会社で仕事を選ぶ」のではなく、「シナジーで仕事を選ぶ」ということです。
つまり、単なる仕事ではなく、自分がいかにその会社で能力を発揮して成果を出せるか、ということに重点を置くことです。
ポイント⑤人間関係<ネットワークをつくる>
これは説明するまでもないかと思いますが、いかにAIや情報化の時代だと言われても、やはり質の高い情報が求められる時代です。
最後は人のつながり、つまりアナログとはいえ人と人のネットワークがものを言うということです。
特に介護業界は狭い世界で成り立っていますので、同業者や元の職場の同僚などの話は信ぴょう性が高いものです。
そのネットワークを活用していけば「□□事業所が〇〇の人材を欲しがっている」という話が舞い込む可能性も高くなります。
つまり、リファラル採用ですね。
前項にあるように自分自身タグ付けして「情報発信」し続けないと、耳寄りな情報も集まってきません。
そういう意味ではネットワーク社会と言えども、情報発信する力や行動力が伴わないと世の中から取り残されることになります。
転職2.0時代で行うべき市場価値を確認する具体的なステップ
自身を客観的にみて定期的に「自己分析をする」という作業を行うことは、転職の意志の有無にかかわらず、社会人として、また人生をより豊かなものにしてくれるかと思います。
自分分析では客観的に見て修正し、スキルや経験、強みを明確にする作業です。
このプロセスは、自分のキャリアの軸を固めるための重要なアプローチでもあります。
様々な方法がありますが、下記のような転職2.0で紹介されている「テンプレートによる質問」を自分自身に投げかけることにより、自分を客観的に、かつ定点観測することにより、転職市場における自分の価値や方向性を整理し、具体的な行動に結びつけることができます。
5つのカテゴリーに基づいた質問テンプレート
以下の5つの観点で自分に質問を投げかけ、それぞれについての答えを明確にします:
- 職種
- 「これまでの経験は?」
- 「どの分野で最も成果を上げるか?」
- 例: 営業、マーケティング、エンジニア、介護職など。
- 業界
- 「どの業界で経験を積んだか?」
- 「その業界での自分の強みは?」
- 例: 製薬業界、IT業界、介護業界など。
- 経験
- 「過去の経験で自信を持って話したエピソードは?」
- 「困難を乗り越えた経験は?」
- 例: 売上達成、プロジェクトの成功、リーダーシップの活躍など。
- スキル
- 「自分が他人よりも得意だと感じるスキルは?」
- 「どのスキルが市場価値が高いのか?」
- 例: コミュニケーション力、データ分析、問題解決力など。
- コンピテンシー
- 「自分を際立たせる行動特性や偶然は?」
- 「どんな環境でも力を発揮できるか?」
- 例: リーダーシップ、学び、チームワークなど。
質問を変えて深掘りする
質問をさらに具体化して自己分析を行います。
- 例 1: 職種
- 「どのような業務内容が最も充実感を与えてくれるか?」
- 「どのような境界で、周囲から評価を得られるか?」
- 例 2: スキル
- 「自分が日常的に当たり前にできることは?」
- 「周囲から感謝されたり頼られたりするスキルは?」
- 例3: 経験
- 「過去に最も困難だったプロジェクトは?どう乗り越えたか?」
- 「成功体験学んだことは何か?」
タグ付け(キーワード化)
テンプレート質問に対する回答を基に、重要なキーワード(タグ)を整理します。
- タグの一例
- 「営業経験」「デイサービスの管理者」「リーダーシップ」「英語力」「IT知識」など。
これにより、自分のスキルや特徴を具体的に伝えるための資料が揃い、職務経歴書や面接で効果的にアピールできるようになります。
第三者の視点を活用する
自身では気づきにくい強みや特徴を掘り下げるため、以下の方法を併せて付け加えるとより強力な武器になります。
ちょっと気恥ずかしいものではありますが、客観的な指摘は大事ですし、参考になりはずです。
- 同僚や上司に質問する: 「私の強みを一言で表現しますか?」
- 友人や家族に聞く: 「どんな場面でも私が頼りになると感じますか?」実際の活用例
- 職務職務書作成: テンプレート質問で得られた「タグ」を盛り込み、読みやすくわかりやすい職務職務書を作成します。
- 面接準備: 質問に対する答えをエピソードとして準備し、思い切った自己PRを行います。
まとめ
私が30代後半の頃の話ですが、初めて本格的な転職を経験したときに元の上司に言われた言葉があります。
「一度転職すると、どんどん低い方へ転がって行くから気をつけろよ。」と。
その頃はまだ、終身雇用や年功序列が色濃く残っていた時代です。
今回は自身のマーケットバリュー(市場価値)を高めるための考え方や手順をご紹介してきました。
まだ20代、30代の方であれば一度の転職で満足せず、自身の市場価値を高めつつ、常に将来設計を意識し、自分を高く売れるよう、商品価値を高める努力と行動を怠らないで欲しいと願います。
中堅層になってくると自分の成果や価値を他者に伝える情報発信も重要ですし、今の業界だけではなく、今後伸びる業界や社会の動向やトレンドにも敏感にキャッチできるよう、自身に最適なキャリアを描くための材料にしましょう。
もし、あなたが引き続き介護業界にいたとしても中堅層になってもキャリアアップのために身に着けて欲しいスキルがあります。
- マネジメントスキル
- 教育(指導)スキル
- マーケティングスキル
- ITスキル
の4つです。
私の場合、必然的にマーケティングスキルやITスキルを中心に学んできたことが何度かの転職時には幸いしました。
是非、準備を整えて新たな世界に挑戦してもらいたいと思います。
【今回の記事の参考図書】『転職2.0 日本人のキャリアの新ルール(著者:村上 臣氏)』
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