ドラッカー流「MBO」で介護現場の生産性とモチベーションを上げる方法

介護のマネジメントと人材育成

やることは多いのに、どこへ向かうのかが見えない…

日々のケア、シフト、記録、家族対応。

現場は忙しいのに、チームとしての目的や優先順位が曖昧――そんなモヤモヤはありませんか。

まさしく、仕事に追われている感じでしょうか。

「皆それぞれ頑張っているのに、成果がちぐはぐ」
「やらされ感が強く、前向きさが続かない」

40代の主任や管理者からとてもよく届く悩みです。

👉 前回は「ドラッカー流・時間管理術で成果を上げる方法」というテーマで時間を味方にする話でした。

今回は一歩進めて、目的(ゴール)を言語化し、目標を運用することで、現場の生産性・モチベーション・そしてあなたの転職価値まで高める方法を具体化する手法についてお伝えします。

「ノルマ」ではなく“目的の共有”がチームを動かす

目的が曖昧な組織では、努力は分散して成果が出ないばかりか、スタッフ同士に摩擦が生まれることは避けられません。

逆に、目的が明確な組織では、エネルギーは一点に集まり、成果につながりやすくなります。

そこで、介護の現場でもぜひ活用したいのが「ドラッカーのMBO(Management By Objectives|目的による管理)」です。

管理と言われると、どうしても抵抗感もありますが、MBOはけっして上から目標を押しつけるような仕組みではありません。

現場が自ら目的・目標を言語化し、進捗を自己統制するための運用思想です。

返って説明が難しくなったかもしれませんが、介護現場におけるMBOの本質は、「利用者の価値(成果は外にある」をということ起点に、やるべきことをチームで合意・達成することにあります。

MBOってなに?
それでなくても介護の世界は横文字が多いのに、また英語?

と思われたかもしれませんが、MBOは平たく言うと「みんなで同じゴールを目指すための方法」です。

つまり、自分たちのチームで「やることをはっきりさせて、その達成を一緒に考える」仕組みのことです。

💡たとえ話で説明すると、サッカーの試合を思い浮かべてください
ゴール(目的)も合意(打合せ)もないサッカーは、みんながバラバラに走って疲れるだけ。点も入らない。

でも「ムダな動きをなくして、相手より多くゴールを決める!」という明確な目的があるから、パスを出す人・シュートを打つ人・守る人が力を合わせられます。

MBOは、この「ゴールをはっきりさせる」ことと同じです。

MBOの流れ
1. 目的を決める
例:「資格の合格ラインとして模擬テストで80点以上とる」
「1か月で本を3冊読む」

2. 方法を自分で考える
誰かから命令されるのではなく、自分で「どうすれば達成できるか」を考える。
例:「毎日30分勉強する」
「寝る前に必ず読書する」

3. 結果をふりかえる
できたかどうかをチェックして、「うまくいった点・改善点」を次に生かす。
つまり、単純に目標を明確にし、言語化するということだと理解してもらえば良いかと思います。


MBOが「生産性」と「やる気」を同時に上げるワケ

1) 重要事項に集中できる(選択と集中)

選択と集中」というと、何やら面倒くさそうに感じますが、
「何をやめるか」
「どれに時間を集中して充てるか」
を明確にすることで、ムダな会議・重複記録・“なんとなくやっている慣習”などが整理されます。

つまり、限られた時間や限られたスタッフの人数で“価値を生む行動”に振り向けやすくすることです。

2) やらされ感が消える(内発的動機づけ)

• 目標は現場が関与して設定。自分事になるから工夫が生まれ、続く。
• 「やらされる仕事」から「達成したい仕事」に変わる。

3) 学習サイクルが回る(振り返り→改善)

• 月次や四半期で振り返ると、成功パターンと改善点が具体化。
• PDCAが回り、技能・接遇・段取り・安全が地力として積み上がる。

4) チームワークが強まる(共通言語ができる)

• 目標・KPI・指標が“共通の言葉”になり、連携と支援が自然に発生。
• 可視化された目標は、評価よりも学習を促す場づくりに役立つ。

💡ポイントをおさらい
• 「上から命令される」管理ではなく、自分で納得して取り組める。
• ゴールがあるから、みんなが 同じ方向に進める。
• 結果を確認することで、次はもっと成長できる。
一言でまとめると、MBOとは、
👉「目的をはっきり決めて、自分で考えて行動し、結果をふりかえることで成長する仕組み」です。

私の体験談|“目的の言語化”で空気が変わった

体験談1|「事故ゼロ」ではなく“転倒リスクの入口”を目標化

あるデイ(定員30人・稼働70%台)で、「事故ゼロ」だけを掲げていた時期は、正直何も変わりませんでした。

原因: 最終結果しか語られておらず、現場が何を変えればゼロに近づくのかが見えない。

転換: 目的(安心・安全)を言語化し、プロセス目標に落とし込み。
• 例)「歩行時の声掛け“3点セット”徹底(目線・名+動作・結果確認)」
• 例)「午後の立位訓練前の水分確認率を週間95%へ」

結果: 声掛け・水分・環境の“改善”で、ヒヤリハットが半減。振り返り会議で成功手順が共有され、新人も即戦力に。

 体験談2|“レクの質”をあげたのは「誰が得意か」の明文化

「レクリエーションが苦手」な主任が進行を無理に担当していた時期は、参加率も笑顔も伸びませんでした。

転換: MBOのもとで“強み×役割”を再設計。
• レク進行=“盛り上げ”が強みの職員へ
• 音楽選定=“選曲センス”の職員へ
• 片付け・記録=“正確さ”の職員へ

結果: 各人の強みが結節し、行事の満足度アンケートが向上。レク後の立位・発声にもプラス効果。

 体験談3|稼働率のKPIを“見学→契約”のプロセスへ分解

昔: 「今月の稼働率を上げろ」という“結果ノルマ”だけ。
今: 「週2回の見学受け入れ」「案内後のフォローTELを48時間以内」「家族向け“よくある不安”資料を事前送付」など、行動KPIに分解。
結果: 見学→契約の移行率が改善、稼働率90%に接近。職員の自信と笑顔が増えました。

💡ポイントをおさらい
👉MBOは「目的→目標→行動→学習」の運用設計
• 介護の目的は「利用者・家族の安心とQOL向上」。
• そこに至るプロセス目標をチームで作り、日々の行動に落とし込む。
• そして、定点の振り返りで学びを仕組みにする――この循環がMBOの生命線です。


実践セクション|現場にMBOを入れる7ステップ

難しい理論”ではなく、まずは、“やり方の順序”だと考えてみましょう。

STEP1|「目的」を短文で言語化

• 例)「安全と尊厳を守り、通いたくなる時間を届ける」
• 例)「家族の不安を、情報と対話で軽くする」
💡ポイント: 10秒で言える“判断の物差し”にする。決裁も即断できるように。

STEP2|“結果KPI”と“行動KPI”を分ける

• 結果KPI:稼働率/満足度/事故件数 等
• 行動KPI:それを引き起こす行動(電話の24h以内返信、見学導線、声掛け基準)
💡ポイント: スタッフが今日から自走できる粒度に落とす。

STEP3|チームで目標を決める

• ミニWS形式で**“現場の知恵”を吸い上げる**。
• 上意下達ではなく、共同決定。合意が重い。

STEP4|強み×役割の再設計

• 強みカード(得意/褒められた行動)を作成し、役割を最適化。
• 苦手矯正より、強みの掛け合わせで成果を早出し。

STEP5|可視化

• 壁1枚で見える「今週の行動KPI」「実施チェック」。
• 朝礼で簡易スタンディングレビュー(3分)。
💡ポイント: 文字ではなく図・色・ピクトで“ひと目”。

STEP6|振り返り

• 月1回・30分でOK。「できた/できなかった理由」を全員で共有。
• 責めない。学びを基準化(ミニ手順書)して次に活かす。

STEP7|小さな祝福

• 達成や工夫を称える文化が定着を生む。
• 褒めポイントは“行動”に紐づけ、再現性を高める。

よくあるつまずき&解決策

①「ノルマ化してしまう」

症状: 上からの数字だけが強調され、反発や疲労感に。
処方: 共同設定+行動KPI中心へ。“何をすれば良いか”を現場語にする。

②「評価と直結してギスギス」

症状: 不公平感・部署差で不満が蓄積。
処方: 役割別に目標項目を差し替え、評価は成長対話を重視。成果だけでなく工夫と学びを言語化。

③「形骸化する」

症状: シートを書いて終わり。誰も見ない。
処方: 朝礼3分レビュー/月次30分レビューを固定化。可視化で“見ざるを得ない”環境に。

④「結果KPIしかない」

症状: 稼働率だけ。現場は何を変える?が見えない。
処方: 例)稼働率↑=見学→契約の行動KPI(案内動線・フォロー速度・質疑リスト)。

具体テンプレート

1) 目的文テンプレ

私たちは、利用者と家族の安心と自立を支え、また来たいと思える時間を提供する。

2) 行動KPIテンプレ(H3)

• 見学後48h以内にフォロー連絡
• 立位訓練前の水分確認率95%
• 声掛け“3点セット”実施率90%
• 家族向け連絡カードの要点3行化

3) 壁1枚ボード例

• 左:今週の行動KPI
• 中:担当・進捗(〇/△/×)
• 右:良かった工夫/来週やること

転職・キャリアアップにどう効くか

面接で“語れる”実績に変換する

• 「目的→目標→行動→結果」のストーリーで語れる人は強い。
• 例)「見学→契約」を改善する行動KPI設計で移行率を改善。
• 例)強み×役割再設計でレク満足度・事故関連の指標が改善。

市場が評価する3ポイント

1. 目的の言語化ができる(思考の軸)
2. 行動KPIに落とせる(運用設計力)
3. 可視化して回せる(チーム牽引力)

「今の職場ではMBOを運用する土壌がない…」と感じたら

介護業界専門の転職エージェントに相談するのも合理的です。
• 強み×実績が活きる職場を紹介
• 履歴書・職務経歴書にMBO実践の成果を翻訳
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• 管理職候補・非公開求人へのアクセス

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「とりあえず情報収集だけ」でもOK。

転職する? 👉 現職に留まるの判断材料として、無料相談はコスパが高い選択です。

まとめ

目的が明確な現場は、静かに前に進み、そして強いものです!

ドラッカー流「MBO」を実践し、介護現場の生産性とモチベーションを上げる経験ができれば、どこの介護事業所に行っても通用することでしょう。

40代からのキャリアは、ステップアップとしての“転職”にも間違いなく優位ですし、極論、全く違う業界に行っても通用すること請け合いですよ(^^♪。

• 目的の言語化が、迷いを消し、チームの力を一点に集める。
• 行動KPIで“今日からやること”が見える。
• 可視化と振り返りで学びが資産になる。
• そして、これらの運用経験はあなたの転職価値を確実に高める

次回予告

第3話|「介護チームを強化する信頼の築き方|リーダーのためのコミュニケーション3原則」というテーマでお届けします。

— 今回に続き、ドラッカーの信頼を育てるコミュニケーション術で現場改善する方法についてです。

FAQ|よくある質問

Q1. 忙しくて目標会議が開けません。

A. 月1回の30分固定で十分です。壁1枚ボード+立ったままレビューで情報密度を上げ、**“やること3つ”**に絞りましょう。

Q2. 人事評価とMBOを切り離すべき?

A. 評価と完全分離が理想ですが、併用するなら**“行動と学び”を評価軸に。数値だけでなく工夫のプロセス**を面談で拾い上げてください。

Q3. 数字が苦手なスタッフが多いです。

A. 行動KPIは言葉でOK。「フォローは48h以内」「声掛け3点セット」など、覚えやすさ>厳密さで設計します。

Q4. 反発が出たときは?

A. 反発の多くは**“自分事化できていない”ことが原因。共同設定と小さな成功の祝福**で空気が変わります。

Q5. 転職でどうアピールすれば?

A. 目的→目標→行動→結果の順で、あなたが設計・実行した役割と、現場の変化を具体に語りましょう。

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