前回、第7話:離職防止と職員定着の戦略では、職員が長く働きたいと思える職場づくりの条件を解説しました。
その中で「人材の成長機会」が定着率に直結することをお伝えしました。
今回はその流れを受けて、「強みを最大化するリーダーシップ」をテーマにお届けします。
部下の強みを見つけ、伸ばし、チーム全体の力を底上げする方法を、ドラッカーの経営理論をもとにわかりやすく解説します。
強みを活かすことが最大の生産性向上
ドラッカーは『プロフェッショナルの条件』(ダイヤモンド社)で、
「人は弱みではなく強みによって成果を上げる」
と述べています。
介護現場は人員も時間も限られるため、「全員が得意分野を発揮できる配置」が成果を最大化します。
強みを引き出すリーダーシップは離職防止にも直結し、40代以降の管理者にとってキャリアアップにも欠かせないスキルです。
弱み改善中心はモチベーションを削ぐ
多くのリーダーは「弱点を克服させる指導」に力を注ぎがちです。
しかしこれは本人の自己効力感を下げ、モチベーションを奪います。
苦手業務ばかりを任されると「自分は評価されていない」と感じ、転職を考えるきっかけにもなります。
私の体験談
老健で主任をしていた頃、記録が苦手な職員に「もっと早く入力しなさい」と指導していました。
しかし彼女はますます自信を失い、辞めたいと相談されました。
そこで逆に利用者対応を中心に任せ、記録は補助的にサポートする体制に変更。
結果、利用者からの信頼が高まり、本人もやりがいを取り戻しました。
この経験から「弱みを直すより、強みを活かす方が成果も笑顔も増える」と実感しました。
強み発揮は達成感と貢献感を生む
人は得意な仕事に集中できるとき、最も成長し、貢献感を感じます。
介護職は「ありがとう」の言葉にやりがいを感じる人が多いため、強み発揮の機会を増やすことが満足度と定着率の向上につながります。
現場での具体例
デイサービスで会話が得意な職員に受付業務を任せたところ、利用者と家族からの満足度が大幅に上がりました。
本人も「自分にしかできない役割がある」と実感し、チームへの貢献意欲が高まりました。
ドラッカー流「強みの発見と活用」
ドラッカーは『明日を支配するもの』(ダイヤモンド社)で、
「成果を上げる者は、自らの強みを知り、それを集中して活かす」
と説きます。
介護現場でこれを実践するには次のステップが有効です。
- 観察による把握:業務中の行動や反応を記録し、強みを客観的に見つける
- 自己評価:アンケートや面談で本人の意識とすり合わせる
- 役割分担の最適化:強みに応じて配置や業務を調整する
成功事例 ― 強み活用で成果が変わる
事例1:利用者対応の達人をフロントに配置
先ほど紹介したデイサービスでは、利用者との会話力に優れた職員を送迎・受付担当にしました。
その結果、利用者満足度が向上し、クレーム件数は半減しました。
事例2:新人教育の得意な職員を研修担当に
ある特養で新人教育が得意な中堅職員をOJT担当に任せました。
結果、新人の離職率が30%改善し、チーム全体のスキル底上げに成功しました。
事例3:事務処理スキルを活かした業務効率化
あるグループホームでは、PC操作が得意な介護職員に記録システム管理を任せました。
結果、事務作業時間が1日あたり30分短縮され、現場で利用者と向き合う時間が増えました。
まとめ ― 強みを活かす文化をつくる
強みを活かすリーダーは、職員の「輝ける瞬間」を増やします。
それがチーム全体のパフォーマンスと満足度を高め、離職防止につながります。
40代以降のリーダーは、このスキルを磨くことでキャリアアップにもつながります。
明日からできる実践ステップ
- 職員の得意業務・不得意業務をリスト化する
- 定期的な1on1面談で強みの変化を確認する
- 強みに応じた役割を割り当て、成果をフィードバックする
- 強みをチームで共有する「強み発表ミーティング」を導入する
もし今の職場で「自分の強みを活かせていない」と感じているなら、転職で環境を変えるのも選択肢です。
介護職専門の転職エージェントなら、
- 得意分野を活かせるポジション
- 教育・研修体制の整った法人
- キャリアアップにつながる職場環境
を紹介してもらえます。
次回予告
強みを活かすリーダーシップは、職員のやる気とチーム力を高めます。
弱みに焦点を当てるのではなく、強みを伸ばすことが生産性と満足度を同時に引き上げるカギです。
次回(第9話)は「優先順位を見極めて成果を出す」をテーマに、ドラッカーの優先順位設定法を介護現場に応用する方法をご紹介します。
よくある質問(FAQ)
Q1. 職員の強みをどう見つければいい?
A. 業務中の行動を観察し、本人に「やっていて楽しい業務は?」と尋ねると自然に見えてきます。
Q2. 強みと弱みのバランスはどう取る?
A. 苦手業務を完全に外すのではなく、最小限に調整し、強みを中心に役割を構成するのが理想です。
Q3. 強みを活かせない職場ならどうする?
A. 組織文化や上司の方針が合わない可能性があります。転職して新しい環境を探すのも有効です。
引用書籍
- 『プロフェッショナルの条件』ダイヤモンド社
- 『明日を支配するもの』ダイヤモンド社
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