ドラッカー流で介護リーダーが未来に強いチームをつくる方法

介護のマネジメントと人材育成

前回(第10話:自分の強みを知り活かす介護リーダー)では、自己分析を通じて強みを業務とチーム運営に反映させる方法を解説しました。

しかし、現場の外では制度改正・人材多様化・ICT化などの変化が絶えません。

強みを活かせる環境を整えたとしても、学びが止まった組織は数年で陳腐化します。

40代以降の主任・管理者にとって、人材育成=未来への投資をどう設計するかが、現場力とキャリアの両方を左右します。

人材育成は未来への投資であり、変化への保険

ドラッカーは『明日を支配するもの』(ダイヤモンド社)で、

「成果をあげるためには、未来に目を向けなければならない」

と述べています。

介護現場における人材育成は、今日の欠員を埋める教育ではなく、明日の変化に対応できる能力を育てる仕組みづくりです。

離職防止・定着率向上・サービス品質の安定・そしてあなた自身のキャリアアップに直結します。

高齢化・制度改正・ICT化で変化は加速している

介護保険制度の見直し、記録のICT化、LIFE対応、外国人材の受け入れ拡大…。

現場の前提は年々更新されます。人材育成を「毎年の定例研修」だけに頼ると遅れます。

必要なのは、日々の仕事の中に学習が組み込まれた運用です。

私の体験談:マイクロラーニングで“ながら学習”を定着

デイサービスで主任をしていた頃、紙資料の研修は参加率が伸び悩みました。

そこで5~7分の動画と小テストを作り、朝礼後の隙間時間に視聴→小テスト→現場で1アクションの流れを週1回に。

3か月で記録ミスが減少、LIFE関連の入力精度も上がりました。

長時間の研修が無理でも、小さく続ける仕組みなら現場は動きます。

知識・スキルは放置すると数年で陳腐化する

例えば口腔ケア・嚥下・排泄ケア・認知症ケアの知見はアップデートが早い領域です。

最新知識の共有が遅れると、安全性・満足度・生産性がまとめて低下します。

学び続ける文化をどう作るかが、現場力を長期的に底上げします。

私の体験談:学びの“行動化”で成果を可視化

デイサービスで研修のあとに「30日チャレンジ」を導入。

各自が現場で試す1アクションを書き、週1で短時間振り返り。

実践写真と数字(例:誤薬ゼロ日数、転倒件数)を掲示板に見える化したところ、参加の熱量が継続。研修が“やって終わり”から“やって、変わる”へと変化しました。

ドラッカー流 人材育成の3原則

ドラッカーは「人は強みによって成長する」と繰り返し述べます。

介護現場に適用する際の3原則は次のとおりです。

  • 1. 強みを活かす役割を与える:得意を主戦場に。苦手は標準化・分担で最小化。
  • 2. 結果を振り返る仕組み:フィードバック分析で、目標→結果→修正を4週間サイクルで回す。
  • 3. 継続的な学習機会:OJT×外部研修×自己学習(マイクロラーニング)のハイブリッド。

フィードバック分析の実装

  • 目標:口腔ケアチェックの抜け漏れ0/月、家族一次連絡24h以内100%、BPSD対応手順の標準化1本作成。
  • 記録:日次で件数・所要・トラブルの有無をメモ。関係者のコメントを1行で添える。
  • 分析:達成/未達の要因を行動レベルで特定。次の4週間で役割・手順・教育を微修正。

成功事例 ― 学びが現場を変える3つの実例

事例1:OJT+外部研修のハイブリッド育成(特養)

施設長Dさんは新人研修をOJTだけで終わらせず、月1回の外部研修を補完。

学んだ内容を翌週の現場OJTで再現するルールを設定。

2年以内の離職率が30%→10%に改善し、夜勤定着も進みました。

事例2:学びのシェア会で知識の定着(デイ)

主任Eさんは受講者が「10分スライド」で学びを発表するシェア会を月1開催。

成功・失敗・数字を1枚にまとめるフォーマットで、現場の再現性が向上。

サービス評価アンケートの自由記述に「説明が丁寧」「安心できる」が増えました。

事例3:多職種ローテーションで視野拡大(GH)

Fさんは介護・看護・生活相談員をローテーションで体験する2日プログラムを四半期に一度実施。他職種の観点を理解したことで連絡の質と速度が改善。

情報伝達のタイムラグが短縮され、事故予防につながりました。

育成は「現場力」と「未来力」を同時に高める設計

人材育成は単なる研修ではなく、仕事の中に学習を埋め込む仕組みです。

強みを伸ばし、フィードバックで結果を修正し、学びを継続させる。

これが不確実な時代を生き抜く現場の標準です。

明日からできる実践ステップ

  1. 変化要因の洗い出し:制度改正・人口動態・ICT化を1枚に要点化(現場掲示)。
  2. 必要スキルの定義:安全・認知症・口腔・記録・家族対応・多職種連携をレベル1~3で言語化。
  3. 学習設計:OJT(現場)×外部研修(月1)×マイクロ学習(週1・5分)のハイブリッド。
  4. 成果測定:KPI(転倒・誤薬・記録漏れ・CS)とKAI(学習回数・提案件数)を月次可視化。
  5. 人事と接続:学習・実践・成果を評価シートに連動、昇格や手当と紐づける。

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まとめと次回予告

不確実な時代こそ、学びが循環する組織が強い。

小さく早く学び、行動し、振り返る。

これを続けるチームは離職が減り、成果が積み上がります。

次回(第12話)は「権限委譲と信頼構築のバランス」

部下に任せながらもチームを安定運営する方法を、ドラッカーの視点で解説します。

よくある質問(FAQ)

Q1. 忙しくて研修時間が確保できません。
A. 5~7分のマイクロ学習を週1回に。朝礼後や引継ぎ直後に視聴→小テスト→1アクションの流れを仕組み化すると定着します。

Q2. 研修しても現場で使われません。
A. 研修→30日チャレンジ→週次振り返り→掲示板で可視化、の循環が必要です。学びを“行動”に変える設計が鍵です。

Q3. 40代以降でも学び直しは遅くない?
A. むしろ管理者の学びは現場に波及します。学習→成果→評価の連動を示せば、転職市場でも強い実績になります。

参考書籍

  • ピーター・F・ドラッカー『明日を支配するもの』ダイヤモンド社

  • ピーター・F・ドラッカー『プロフェッショナルの条件』ダイヤモンド社

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