介護現場で離職を防ぎ、職員が長く働きたいと思う職場づくり

介護のマネジメントと人材育成

ようやくチームがまとまり始めたと思った矢先に離職者が出てしまう。

表面では上手くいっていたはずなのに、水面下では何が起こっているかわからない。

離職率の高さは現場の負担も大きくなる永遠に続くとも思われるような重要課題です。

介護業界は慢性的な人手不足に加え、離職率の高さが常に課題として挙げられます。

厚生労働省「介護労働実態調査」でも、介護職員の1年以内離職率は全産業平均より高いというデータがあります。

離職が続けば、シフト調整が困難になり、新人教育に追われて現場が疲弊し、結果として利用者様へのケアの質にも影響が出ます。

こうした悪循環を断ち切るためには、「職員が辞めない職場づくり」が重要です。

👉 前回「第3話:信頼を育てるコミュニケーション術」では、チームの信頼関係を築く方法を解説しました。

今回はさらに一歩進めて、「離職率を下げ、職員が安心して長く働きたいと思う職場づくり」をテーマにお伝えします。

離職防止のカギ ― ドラッカーの「人が辞める理由」に学ぶ

ピーター・ドラッカーは『マネジメント[エッセンシャル版]』(ダイヤモンド社)で次のように述べています。

人は待遇ではなく、仕事そのものや人間関係によって辞めることが多い。

つまり、給与や休日は大切ですが、それ以上に「ここで働く意味を感じられるか」が職員定着の大きなカギなのです。

介護現場での定着率向上には、以下の3つの視点が必要です。

  • やりがいを感じられる仕組み
  • 働きやすい勤務体制
  • 成長を支える環境

職員が辞めない職場づくりの3本柱

3-1. やりがいの見える化

介護のやりがいは「ありがとう」という一言に象徴されますが、忙しい現場では実感しづらいことも。

次の工夫で「仕事の意味」を見える化しましょう。

  • 利用者様や家族からの感謝の声を掲示板・朝礼で共有
  • 個人の成果だけでなくチームの成果も評価
  • 年間の「できたことリスト」を作り、振り返りで達成感を共有

3-2. 公平で柔軟な勤務体制

離職の大きな要因はシフト負担の不公平感です。可視化と柔軟運用で不満を減らします。

  • 夜勤・日勤のバランスの偏りを見える化
  • 急な休みにも可能な限り柔軟対応
  • 育児・介護など家庭事情に配慮した制度設計

3-3. 成長を支える仕組み

「成長実感」は定着に直結します。将来像が描ける環境づくりを。

  • 定期研修・資格取得サポート
  • 新人へのメンター制度
  • 昇進・評価基準の明文化と共有

成功事例 ― 定着率が向上した現場の取り組み

事例1:感謝を共有する文化

ある特養では、毎週金曜にスタッフ同士で「ありがとうカード」を交換。小さな感謝が可視化され、雰囲気が一変。半年後には離職率が20%減少し、「職場が明るくなった」との声が多数寄せられました。

事例2:柔軟なシフト運用

あるグループホームでは、週ごとに「自己申告型シフト」を導入。家庭の事情や体調に合わせた勤務調整が可能になり、パート職員の定着率は90%超に。採用コストの削減にもつながりました。

事例3:キャリアパスの提示

あるデイサービスでは入社時に「3年後のキャリアマップ」を配布。

1年目:介護技術の習得/2年目:後輩指導/3年目:チームリーダー候補――と道筋が明確になり、離職意向が大幅に減少しました。

リーダーができる「小さな一歩」

制度改革だけが解ではありません。日常でできる小さな一歩の積み重ねが効きます。

  • 月1回の1on1面談で本音を聞く(雑談から入る)
  • 改善できる要望は即対応し、実施日と方法を共有
  • 難しい要望はできない理由と代替案を丁寧に説明

もし環境が改善しないなら…

努力しても経営方針や体制が変わらず、職員の声が届かない職場もあります。

無理を続けて心身を壊す前に、環境を変える決断もキャリア戦略の一つです。

介護職専門の転職エージェントでは、

まとめ ― 「ここで働きたい」と思える職場を

離職防止のためには、やりがいの見える化・公平で柔軟な勤務体制・成長を支える仕組みの3つが欠かせません。リーダーが意識して取り組むことで、現場は安定し、利用者様へのサービスも向上します。そしてそれは、リーダー自身のキャリア価値の向上にも直結します。

次回予告

第5話では、変化に強い介護現場をつくるための変革推進術について解説します。現場の抵抗を乗り越え、チームを前向きに変えていく方法をご紹介します。

FAQ|よくある質問

Q1. 新人がすぐ辞めてしまいます。どうすれば?
A. 先輩がつくメンター制度が効果的。孤独感を減らし、早期離職を防げます。

Q2. 給与や待遇で辞める人が多いのでは?
A. 調査では待遇よりも人間関係やりがいが理由になることが多いです。改善可能な範囲から着手を。

Q3. 1on1面談で何を話せばいい?
A. 進捗よりも「最近どう?」と気持ちを聴くことが大事。信頼構築の時間に。

Q4. 定着率の改善にどれくらいかかる?
A. 取り組みにもよりますが、半年〜1年で数字に現れる例が多いです。継続が鍵です。

参考文献

  • ピーター・F・ドラッカー『マネジメント[エッセンシャル版]』ダイヤモンド社
  • 厚生労働省 介護労働安定センター「介護労働実態調査」

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