「新人がすぐに辞めてしまう」
「ベテランが次々と退職を申し出る」
そんな状況に直面したことはありませんか?
どれだけ会議で議論して業務フローを整えても、職員が職場に定着しなければ組織は安定しません。
むしろ「人が辞める」ことは、教育コスト・採用コストを繰り返し発生させ、リーダー自身の負担を大きくする悪循環を生みます。
厚労省のデータでも、介護職の離職率は依然として12%台と高止まりしています。
その背景にあるのは、待遇面だけではなく、人間関係の摩擦や将来への不安、働きづらさです。
とりわけ40代以降の主任・管理者にとっては自身の問題でもあるという方も多いことでしょう。
、「このまま同じ環境で働き続けて良いのか」「職員が安心して働ける環境を自分が作れているのか」という悩みは、避けて通れない現実でしょう。
だからこそ、今求められるのは「職員が辞めたくないと思う職場」をどう設計し、日々のマネジメントにどう落とし込むかです。
ドラッカーの理論を手がかりに、離職防止と職員定着のための戦略を探っていきましょう。
前回の第6話:生産的な会議運営術では、無駄を減らし、会議の成果を最大化する方法をご紹介しました。
しかし会議を効率化しても、職員が職場を離れてしまってはその効果は長続きしません。
今回は介護現場における深刻な課題「離職防止と職員定着」をテーマに、ドラッカー流マネジメントの視点から解説します。
定着率は「職場体験の質」で決まる
ドラッカーは『マネジメント[エッセンシャル版]』(ダイヤモンド社)で、
「人は組織に雇われ、上司から離れる」
と述べています。つまり給与や制度だけでなく、日々の人間関係や体験の質が定着率を大きく左右します。
介護現場で離職を防ぐには、以下の3つが欠かせません。
- 心理的安全性の確保
- 成長機会の提供
- 働きやすい環境の整備
職員は「人間関係」で辞める
厚労省の調査でも、介護職の離職理由の上位は「人間関係」です。
人間関係のストレスは、業務負荷以上に職員のモチベーションを削ります。
私の体験談
私が主任を務めていた小規模多機能型居宅介護では、一人のリーダー職員の言葉づかいが原因で新人が次々に辞めてしまったことがありました。
古くから居る職員だけが残り、なんと人数だけで言うと2年間で職員が全員入れ替わるくらいに新人が辞めていくのです。
業務そのものは難しくなかったのに、雰囲気の悪さが耐えられないという声が多かったのです。
もちろん、それを許す経営体制にも問題はあったでしょうが、リーダー研修を徹底的に行い、フィードバック面談を導入。
「人を否定せず、改善点を一緒に考える」姿勢を学んでもらった結果、半年後には離職がゼロになりました。
人間関係の改善は、離職防止の第一歩です。
成長感がない職場は将来が見えない
人は自分の仕事が将来につながると感じるときに定着します。逆に「成長が見えない」と感じると、別の職場を探す動きが強まります。
私の体験談
デイサービスでキャリアパス制度を導入した際、若手職員が「5年後の自分の姿が想像できる」と話してくれました。
それまで「介護の仕事に将来はあるのか」と悩んでいたスタッフが、資格取得支援を利用して実際にリーダーに昇格し、他の職員の良い刺激にもなりました。
成長感を与える仕組みは、離職防止に直結します。
ドラッカー流「人が辞めない職場」の条件
ドラッカーは『非営利組織の経営』(ダイヤモンド社)で、
「人は成果を求め、貢献できる場を求める」
と述べています。介護現場に応用すると次の3つが重要です。
- 成果を認める評価制度
- 一人ひとりの強みを活かす役割分担
- 自己成長を支える制度設計
定着率が変わった介護現場
事例1:新人定着率20%向上(特養)
ある特養では先輩によるメンター制度を導入しました。
毎日の短時間フィードバックと感謝の言葉を意識的に行った結果、1年後の定着率が80%から96%に向上しました。
事例2:キャリアマップの導入(デイサービス)
デイサービスでは全員にキャリアマップを配布し、資格取得支援制度を拡充しました。
職員が「5年後の自分の姿」を描けるようになり、離職率は半減しました。
事例3:柔軟シフト制度(グループホーム)
子育て世代の職員には短時間正社員制度を導入。
家庭と両立できる環境が整い、即戦力人材の離職を防止することに成功しました。
まとめ ― 定着率向上は投資である
離職防止はコストではなく人材への投資です。
人が辞めない職場は採用・教育コストを削減でき、サービスの質も向上します。
40代以降の介護リーダーがキャリアアップを目指すなら、まずは「人を大切にする文化づくり」から始めましょう。
明日からできる実践ステップ
1. 離職者面談を行い、退職理由をデータ化する
2. 人間関係改善のためのリーダー研修を導入する
3. キャリアパスと評価制度を見直す
4. 働き方柔軟化(シフト調整・短時間勤務)を進める
転職を考えるあなたへ
もし今の職場で「この先も働き続けられるか不安…」と感じているなら、
職員定着率の高い法人を選ぶこともキャリア戦略のひとつです。
介護職専門の転職エージェントなら、
人間関係の良さ
成長支援制度の充実度
柔軟な働き方の可否
など、数字だけでは分からない職場のリアルを教えてくれます。
次回予告
職員が辞めない職場は、日々の小さな配慮と仕組みづくりから生まれます。
「人を大切にする文化」を根付かせることこそ最大の離職防止策です。
次回(第8話)は「強みを最大化するリーダーシップ」をお届けします。
部下の成長を引き出し、チーム力を飛躍的に高める方法をお伝えします。
よくある質問(FAQ)
Q1. 離職者が多い原因をどう突き止めれば?
A. 退職者面談や匿名アンケートでデータを集め、共通項を探ることが効果的です。
Q2. 40代以降で転職は遅くないですか?
A. むしろ主任・管理者の経験は高く評価されます。マネジメント経験を武器にキャリアアップできます。
Q3. 人間関係改善に時間がかかる場合は?
A. すぐに全体を変えるのは難しいため、まずはリーダー層から研修を行い、良い影響を広げるのが効果的です。
引用書籍
- 『マネジメント[エッセンシャル版]』ダイヤモンド社
- 『非営利組織の経営』ダイヤモンド社
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