前回の第5話「“ありがとう”言葉が現場の奇跡をつくる」では、
感謝の言葉が脳の“報酬系”を刺激し、
職場の空気を変える力を持っていることを解説しました。
そして今回は、その流れを受けて「指示待ち職員」を
どうやって“自ら動く人材”に育てるか、
脳科学と西田文郎氏の理論をベースに掘り下げていきます。
一見、本人の「やる気」や「能力」の問題に見える“指示待ち”。
しかし、実はリーダーの関わり方次第で、
その職員の思考回路も行動も変えることができるのです。
示待ち職員には「問いかけと言葉の習慣」が効く
自発的な行動を引き出すには、
「問いかける」「気づかせる」「任せる」といった、
リーダーの“言葉”が脳を活性化させる鍵になります。
✔ キーワードは「自己決定感」
人間の脳は、自分で決めたことに対して最も強く反応します。
“やらされる”のではなく、“自分で気づいた”“選んだ”という体験が、
行動を継続させるエンジンになります。
✅ ポジティブなフィードバックが「挑戦回路」を育てる
西田文郎氏の著書『脳の使い方で人生が変わる』(三笠書房)では、
「人は、自分の成長や変化が“認められた”ときに、
もう一度チャレンジしようという気持ちになる」
と述べています。
つまり、たとえ小さな成功でも「よく気づいたね」
「その提案ありがたい」
といったポジティブな言葉をかけることで、
職員の脳に“挑戦する価値”がインプットされるのです。
これが、“主体性”の芽を育てる最もシンプルな方法です。
✅ 脳の「報酬系」と「自己決定システム」
行動を変えるには、感情と報酬の回路に働きかける必要があります。
• 報酬系(ドーパミン回路):成功体験や称賛によって活性化
• 自己決定感:自分で選んだ行動に対する満足感と記憶定着
この2つの要素が刺激されると、
脳は「またやってみよう」
と前向きなループを回し始めます。
西田氏は『ツキの大原則』(現代書林)で、次のように述べています:
「脳は、“できた”という記憶をエネルギーに変える」
これは、フィードバックの仕方ひとつで、
部下の行動が大きく変わることを示しています。
(事例①):新人職員の自発性を育てた「問いかけメモ」
あるデイサービスのリーダー(40代女性)は、指示待ちの多い新人職員に、 「この仕事、あなたは何を意識してやってる?」と書いた付箋を、毎朝手渡すようにしました。
最初は戸惑っていた新人も、
1週間後には“自分なりの答え”を持つように。
「私は、利用者さんの表情を見るようにしています」
「声かけのタイミングを意識しました」などの言葉が増え、
3ヶ月後には、ベテラン職員が「この子、すごく気が利くようになった」と評価するほど成長しました。
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(事例②):会議の冒頭で「成功共有」→チームの提案力UP
小規模多機能型施設での朝礼にて、 「昨日一番うまくいったことを1つずつシェアしてください」とリーダーが促すようにしたところ、
初めは無言が続きましたが、
徐々に「利用者さんが笑顔を見せてくれた」
「○○さんの声かけに助けられた」などの声が出始めました。
これにより、他者の“良い行動”に気づく習慣が生まれ、
互いに称賛し合う文化が定着。
その結果、提案や改善案が自然と飛び交う職場へと変化していきました。
(事例③):“報連相”が消えた職員が変わった「選択の言葉」
訪問介護の現場で、あるベテラン職員が突然、報告や相談をしなくなりました。
「また何か言われるかも」と思い込んでいた彼女に、
リーダーはただ一言、
「報告は“信頼しているから聞きたい”と思ってるんだよ」
と伝えました。
その日から報告頻度が増え、
「選択肢を渡してくれることで、
自分で判断できる余地があると感じました」 と本人も語っています。
✅ 再主張(Pointまとめ):問いかけと信頼で脳にスイッチを入れる
「なぜやらないのか?」と責めるのではなく、
「どうしたらできるか?」と問いかける。
「また間違えたね」ではなく、
「ここは前より良くなってるね」と伝える。
こうした“問いかけ”と“信頼の表現”が、
職員の脳のスイッチを入れ、
自発的に行動する人材を生み出すのです。
西田文郎氏は『No.1理論』(三笠書房)で、
「人は、自分の能力が信じられたとき、本当の力を発揮する」
と述べています。
だからこそ、リーダーは「問いかけと信じる言葉」を日常に取り入れましょう。
✅ まとめ|次回予告へ
指示待ちから脱却するチームづくりは、
「言葉の使い方」で決まります。
今日から「問いかける」「認める」「任せる」を意識することで、
チームの空気は確実に変わります。
🔸次回予告(第7話):「ミスを責めない現場が人を育てる」
次回は、“できたこと”にフォーカスする職場づくり。
「小さな成功の積み重ねが、職場のポジティブ回路を育てる」
というテーマでお届けします。
🔖 書籍出典リスト
『脳の使い方で人生が変わる』/三笠書房/西田文郎
『ツキの大原則』/現代書林/西田文郎
『No.1理論』/三笠書房/西田文郎
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