前回の第6話「指示待ち職員を動かす脳のスイッチ」では、 問いかけと言葉の使い方によって職員の主体性を引き出せるというお話をしました。
今回のテーマは、その続編ともいえる「“できたこと”にフォーカスする職場づくり」。
介護現場では「課題」や「できていないこと」に目が向きがちです。 しかし、そればかりでは職員のモチベーションが下がり、自信を失ってしまいます。
“できたこと”を意識的に言葉にする職場は、職員の脳を活性化させ、 前向きな行動を生み出す「ポジティブサイクル」を作り出します。
だからこそ、今回は「できたこと」を言語化して共有し、職員の脳を前向きにスイッチオンする方法をお伝えします。
✅ 脳の「報酬系」を活かした言葉が行動を変えるカギ
人間の脳には「報酬系(ドーパミン回路)」という仕組みがあります。
小さな成功や感謝の言葉がドーパミンを分泌させ、 やる気・集中力・創造性を高めてくれます。
特に、言葉によるフィードバックが与えられたとき、 脳は「認められた」と感じ、次の行動に前向きに取り組むようになります。
逆に、「ダメ出し」や「欠点指摘」ばかりでは、 脳は委縮し、指示待ち・受け身の行動になってしまいます。
西田文郎氏は著書『脳の使い方で人生が変わる』(三笠書房)で、 「成功を意識したとき、脳は成長に向けて働き出す」と述べています。
これは、管理者やリーダーの“言葉”が、 部下の行動を大きく変える力を持っていることを示しています。
ポジティブな言語化で現場が変わった3つの実例の紹介
📍 事例①:「できたことシェア会」で報連相が活性化
ある通所介護施設では、終礼の時間を活用し、 「今日できたこと」を一人ひと言ずつ共有する取り組みを始めました。
「○○さんの排泄介助、スムーズにできていたね」
「△△さんの表情がやわらいでいたのは、あなたの声かけのおかげ」
このようなポジティブなコメントが飛び交うことで、 チーム内に前向きな空気が生まれ、報連相の質も向上。
結果として、職員の離職率が下がり、サービスの質も安定していきました。
📍 事例②:「見える化ノート」で“成長”が実感できる
あるグループホームでは、毎週1回、 職員同士が“できたこと”を付箋に書いて、壁に貼る「成長の見える化」掲示を始めました。
「初めて一人で薬の準備ができました」 「○○さんが安心して笑ってくれました」
このような言語化の積み重ねが、 自分や他人の成長を“見える”形にし、職場に一体感を生んだのです。
西田氏の『ツキの大原則』(現代書林)にも、 「成功を記録することで、脳は“次の成功”に向けて動き出す」と記載されています。
📍 事例③:「称賛のフィードバック」が新人の意欲を高めた
新人職員の行動を見て、先輩職員が「できたこと」に注目し、
「今の誘導、とても安心感があったよ」 「あなたの表情が、利用者さんに伝わってるね」
と声をかける文化がある職場では、 新人がのびのびと動き、自然と質問や提案が増えていきました。
職員一人ひとりの「強み」に光を当てることが、 現場力の底上げにつながるのです。
✅ 転職という「選択肢」が心を前向きにすることも
ここまでご紹介してきたように、職場内で「できたこと」にフォーカスし、
仲間の成長を称える文化があると、現場の空気は格段に良くなります。
ただ現実には、「それが今の職場では難しい」と感じる方も少なくありません。
もしあなたが「もっと前向きに働ける場所を探したい」と思うなら、
一度プロの転職エージェントに相談してみるのも選択肢の一つです。
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✅ まとめ
「できたこと」を言葉にして伝える。
たったそれだけのことが、職場の雰囲気を一変させます。
しかし、事例①の「できたことシェア会」では注意したいことがあります。
なかなか「出来たこと」が見つけられず、一人のスタッフがつい「きなかったこと」をシェアしてしまい、「できなかった報告会」に連鎖してしてしまうことです。
そこに、リーダーが突っ込みすぎて「ダメだし合戦」となってしまうパターンだとスタッフが委縮してしまい、返って逆効果になりかねません。
西田氏の理論から逸れないよう、リーダーはファシリテーションのスキルを身に着け、軌道修正を図りたいところです。
言語化された称賛や感謝の言葉は、 相手の脳を前向きにし、チーム力と離職防止につながります。
西田文郎氏の『No.1理論』(三笠書房)では、 「人は、自分の力を“認められた”とき、本当の力を発揮する」と述べられています。
リーダーの役割は「課題を見つけて叱る人」ではなく、 「できたことに気づき、言葉にして渡せる人」へ。
明日からぜひ、“できたこと”にスポットを当ててみましょう。
✅ 次回予告
次回のテーマは、 『“失敗”が脳を進化させる最強の学び』です。
失敗を恐れず、チャレンジしやすい職場環境とは?
リーダーが「失敗」とどう向き合うかが、 職員の成長を左右します。
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📚 引用書籍リスト
• 『脳の使い方で人生が変わる』/三笠書房/西田文郎
• 『ツキの大原則』/現代書林/西田文郎
• 『No.1理論』/三笠書房/西田文郎
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